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September 30, 2006

外国人政策シンポジウム

うわー、一ヶ月以上もブログ放置してた・・・
って、なんかネットに文章いろいろ書いた気がしてたのは、ミクシィのほうでした、ってことに気づく間抜けさ(苦笑)

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今日のエントリも、もともとはミクシィでの書き込み。
(これから何回かはミクシィでのやり取りを転載作戦でいきます)


昨日は釣り仲間(笑)のSさんのご紹介で「21世紀の外国人政策シンポジウム」へ。
講義があるので、冒頭30分ぐらいしかいられないのはわかっていたのだが、どうしてもその冒頭に行きたかったのだ・・・「前」法務副大臣の河野太郎代議士の基調講演があるからね。

河野太郎といえば、総裁選出馬に意欲を見せて推薦人が集まらずあえなく・・・と聞けば、「自民党の河村たかし?」という感じだが、なんのなんの、掛け値なしのリベラル派政策通である。
というより、安倍-塩崎を出世頭に、石原伸・渡辺喜ら今をときめく政策新人類(ていうかここ、あらためて書いてみると2世・3世ばっかだな)の最後の良心、自民リベラル派の最後の砦である。政策新人類ではかなり出遅れ、下からは山本一太だの世耕だの小泉チルドレンだのに突き上げられ、はなはだ心もとない砦という気もするが、心からがんばってほしい方である。

それはともかく、この河野先生、第三次小泉内閣の法務副大臣として、外国人関係の法整備に、並々ならぬ意欲を燃やしてることは、知っていた。
この前も、「研修生みたいなインチキな制度はもうやめなきゃいけません」という談話が伝わってきて、おって思った。
だから昨日は、基調講演だけでも聴きに行きたかったのね。

一言で言いますと、すばらしい見識でした。
群馬の工場でのフィールドワークをして、現場の声を聞いていた7~8年前から、ここはこうすべきだよなぁ、と個人的に思っていたことを、全部おっしゃってくださる。
もちろん、彼自身いまや非主流派だし、今後どうなるかはまったく不透明。財界と経産省の巻き返しもあるだろう。
ただ、入管の各課の現場経験者からなるPTで、相当たたき上げたと見える彼の見解が、このレベルになっていたというのは、正直評価していいだろう。とりあえず、法務省はこのあたりのことを考えているということで。

箇条書きします。

・外国人受け入れ関連分野の本音と建前の乖離は甚だしい。表を閉めていたけど裏門はがら空き、という状態から、裏門はきっちり閉めて、表門は呼び鈴を押されたら開けよう、という政策に切り替えなきゃならない。

・インチキの最たるものは研修制度。だいたい、不況期に一番苦しい中小企業ほど研修生に頼るという実態自体、立法意図からするとめちゃくちゃな運用がされている最大の証拠。これは、出先の工場で働く現地人材を日本の本社で研修するというような場合を除いて、原則廃止する。

・今まで受け入れ態勢が整っていなかったことのお詫びをしたうえで、受け入れの根拠が血統というところにしかない日系人受け入れは中止。

・日本に非専門職労働力を受け入れる際の基準にすべきは日本語能力。来る以上は社会統合を目指すべきなので、言語能力ははずせない。働いてる間に日本語能力を伸ばしてもらって、基準に達しなければ帰国してもらう。その基準認定に、各受け入れ職場における労働技能に関する資格認定も加える。段階を踏んで、希望すれば、永住権、国籍を付与する。

・労働者受け入れ以前に、日本語を海外に広めていく施設(ドイツのゲーテ・インスティチュートが念頭にあるらしい)を整備していく。もちろん、受け入れ労働者やその家族をフォローするために国内にも。

・導入に当たっては大きく二つの路線がある。ひとつは、先ほどいった日本語能力で入り口を絞って、社会統合を目指すもの。私はこの立場。財界や経産省が主張しているのは、研修制度を拡充してローテーション的な制度を作ること。5年間程度の年限を決めて、純粋な労働力として完全な管理下で受け入れる。もちろん家族呼び寄せは禁止。これの本音は、昇給などの必要がないので、常に低賃金の労働力を受け入れられるということ。これでは実際のところ、搾取を固定化させる短期奴隷とでもいうべき制度ではないか?遠い将来どういうそしりを受けることか?

・外国人を犯罪視している向きの多い現況では、外国人政策に関してのまともな議論ができない。その状況を解除するためにも、外国人犯罪に対する取締りの強化、管理の強化(評判の悪かった指紋の件含む)は必須。

・今現在、特別永住者を除いた外国人比率は1.2%。不法就労に対する取締り、日系と研修の廃止を行えば、当初はこの数字は減るだろうが、中長期的には3%ぐらいを上限になだらかにあげていく。その時点でまた抜本的な議論をする。

・3%というと、現状の倍だが、欧州諸国よりはずっと少ないというレベル。これでは、単純に人口の減った分を外国人で生めるというほどの数にはならない。いわば、「非常に小さい国への縮小」から「小さい国への縮小」に変える程度の、マクロにいえば収縮傾向に多少の歯止めをかける程度のもの。しかし、これ以上に急速に人口構成を変えるようなやり方は、社会的合意が得られないのではないか。


とまあ、おおむね同意可能。
ひとつケチをつけるとすれば、新規の不法入国者に対する管理を厳しくするのは賛成なんだけど、事実上「黙認」した(してなかったとは・・・いわせませんよ、ええ。「縦割り弊害による不作為」も当然責任のうちです)結果として、「バブル期よりここまで日本を支えてきた」超過滞在・不法就労のみなさんへの処遇。彼らには、信義上も、政策整合性の点から言っても、何らかの寛大な正規化措置をとる必要があるだろう。
だって、新規に試験をパスして入国してくる連中よりも、日本語はうまいし、仕事もできるんだから。そして何より、ここまでの零細企業や地域経済への貢献度はそりゃあもう・・・

まあ、これは経過措置みたいな話だし、今日は触れなかっただけかもしれないから、まあいい。


でも、ハタと考える。
確かに、外国人政策、という観点で考えると、河野太郎路線はほとんどケチのつけようがない。
しかし、総合的な労働政策/社会保障政策として考えると、まだまだ突っ込みどころがないだろうか。というより、そういう観点はまったく抜きになっているのではなかろうか。

日本は一般的に思われてるほど、外国人に対して差別的な国ではない。というか、日本人と外国人の待遇差は、ほとんどない。ええ、もちろん、日本人の「非正規」と、ですけどね。
ていうか、日本人の労働条件を切り下げる形で、彼らとの待遇の均等化が起こっちゃったわけ。賃金面だけではない。雇い止めやら待機やら、間接雇用にまつわる厳しい点もほとんど同じ。

丹野清人さんはこの状況を、「雇用ポートフォリオ化」と呼んでいるが、便利なので授業でもよく使わせてもらってる。

バブルのころには、非正規のプールって言うのはすごく少なかった。農村出稼ぎはほとんどいなくなるし、世帯収入が向上して主婦パートに切迫感はないし、まだ専業フリーターはほとんどいない。でも仕事だけは爆発的にあったから、外国人に頼るしかなかった。あくまでも足りない分の穴埋め、という形で。もちろん、キャリアパスも企業の人事管理上の位置づけも、日本人の多くを占める正社員とはまったく異なる。

でもいまはまったく状況が違う。派遣法の改正で、製造業にも派遣がなだれ込む。フリーター層は(偽装)請負も期間工もやるし、主婦パートもぞろぞろ。出稼ぎさえ復活してる。
そんな中の一角としての外国人。熟練につながらないデッドエンドジョブは、非正規にやらせるのが今の企業のデフォルトだが、それを担わせるポートフォリオを作っといて、外国人だろうがフリーターだろうが派遣だろうが、都合のいいときに都合のいい労働力をちょちょいとつまむ。いらないときは後腐れなくサヨウナラ。
だいたいまあ、こんな感じなわけです。


河野先生、いいこと言ってたんだけど、この辺の話というのは、どのあたりまで目配せしてるのか、すごく気になった。

製造業だけ捉えれば、デッドエンドジョブは海外移転でいいじゃないかと言う人もいるかもしれないが(しかしそれさえもジャストインタイムの進展でそう単純なものでもない)、サービス業は移転するわけにいかない。
ビル清掃、弁当屋、道路保守。どんなに生産性が悪くても、こんな仕事を海外移転させることができるはずないわけです。

すると、どんな経済状態、どんな技術革新があったって、かなりの量のデッドエンドジョブを日本社会は抱え続けなきゃならん。
このババを、誰が引くのか。どうやら日本社会は、それを移民に押し付けちゃえ、という風にはなってない。(仏独は半ばそんな感じでやって、いまそのツケを払ってる)

じゃあ、誰が? この状態で外国人を入れてくると、日本人の非正規はどういう状態になるの? それ以前にやっておくべき非正規労働の改善策は?
労働市場の問題だけじゃない。その状態になったときに、「職の競合」意識に駆動された西欧型のレイシズムも起こるんじゃないの? 「雇用ポートフォリオ」の日本なら、なおさら。

とまあ、こういう視点がないと、外国人を含む労働問題というのは基本的に語れないと思うんです。


しかし、河野先生を責めるのも酷というもの。
だってそもそも、外国人関係の専門家って言われる人たち自体に、その視点がほとんどないんだもの・・・外国人の問題は外国人の問題、個別の状況を何とかしましょうね、というだけの話で。
縦割りになってる役人関係は、推して知るべし。厚労省あたりが、もう少し法務と意見交換すべきところなんだろうが。 というか、そもそも厚労省の中で、外国人とフリーターや派遣じゃ、あつかう部局がぜんぜん違うんでしょう。


個人的には、外国人関連のでかい話から手を引いて久しいし(授業では教えてるけど)、もうこの問題を正面から扱うつもりはない、と各所に宣言してきたけど、うーん。
今の仕事を片付けたら(来年ぐらい?)、もう一回勉強しなおして、こちらの業界にもなんとか絡んでいきますかね。もしかしたら、やるべきこと、書くべきことも少しはあるんじゃないかと思いましたですよ。
それには、もう一度しっかりフィールドもやりたいしなぁ。

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