ワーキング・プア? I
一部で話題になってた先週日曜日のNHKスペシャルの「ワーキングプア」特集、リアルタイムで見た後に、録画で見た妻にもつきあって、繰りかえし観る。
この言葉自体は、99年にバーミンガムでの授業で、"Emerging new Inequality"というような枠組みの中で初めて聞いた気がする。
そのときはイギリスでも、"Working Poor"は、ジョブレス(ジョブロス)・リカバリーに直面するアメリカの実態、というニュアンスで、ヨーロッパもこうなるのを出来る限り避けるためにはどういった社会政策が必要か、というような文脈だった気がする。
その言葉が、日本でも普通に市民権を得て使われるまでになっている00年代中葉。
作れば作るほど赤字になる農作物、崩壊した山間の集落、若者が首都に出てくればホームレス。
ミクロの事象としては想定の範囲内の出来事ではあったが、ペルーのドキュメンタリーと錯覚しそうな内容にくらくらする。
秋田の閉塞感を見ていると、鳥海連山が、アンデス山脈に見えてくる。
そういえばこの春から、アンデスの麓の村々で、はからずも耳目をにぎわす事件が頻発してたっけ。
畠山鈴香、岩手洋野町の母子殺害。
いまや、「また大阪か」というより、「また北東北か」と言ってしまいたくなるような感さえある。
先日は、こんなやりきれない事件さえ起こっている。
生活保護却下に死の抗議? 秋田市役所駐車場の練炭自殺
北九州でも生活保護がらみの餓死者なんかがでているが、ここには、昨秋以来の生活保護費への国庫負担割合の引き下げ論議が微妙な影を落としていることは間違いないだろう。
東奥日報:生活保護費/地方への負担転嫁に反対
こんなことにまで各地域の自立性と競争原理とやらを貫徹しようとするのが、現政権(とおそらくは次期「再チャレンジ」政権)である。
出し抜けに、IWGPシリーズの名作、『電子の星』の中で、親友を捜しに山形からやってきたひきこもりの若者が、「たたかって負ける」ことをしようともしない彼に焦れるマコトに、「マコトさんは東京の人だから分からないんですよ。東京に住んでいるというだけで、半分勝っているようなもんだから」と言い返すシーンを思い出す。
「ワーキングプア」特集を見ても、地域間の分配とか労働法制とか社会意識とか、論点はいくらでも出てくるが、とりあえず「この国は結構貧しい」という、今まで見てみないふりをしてきた現実が、いよいよ無視のできない形であらわになってきた、ということにつきるだろう。
いかなる社会政策を考えるにせよ、とりあえず、「この国は結構貧しい」という大前提をしっかり認識して共有することからスタートしなければ、話にならない。
労働者への安定の供給の再構築、適切な生産者と消費者の関係性や消費財/サービス価格の再編成、土木行政に替わるまっとうな地域間再分配体制の確立。そういったマクロ面での政策を模索するのが「王道」。
「現実的」な方法論だけに撤退して、戦線を自ら縮小する愚は避けなければならないから、こういう「王道」に向けたロビイングとか集合行動は、絶対に必要である。
ただし、そんなことを言っていても、大衆は個々の生活をサバイブしなければならない。だからその意味において、ネオリベラルな切り捨てに逢わないように、個々の労働者も、自分の「市場価値」を常に意識しておかなければならないし、子供を持つ親や教育現場は、小さい頃から「職業生活」に直結させる教育を重視し、「キャリアプラン」を意識させることが必要になる。
切り捨てられる「下流」のそのまた下の泥流に、自らや可愛い我が子が落ち込まないために。半径5メートル以内の範囲だけでも、泥流からは首を出しておけるように。いかにそれが結果として、ネオリベラルのシステムを高速回転させる燃料となる結果をもたらすだけのものであったとしても、「アウトノミア」の理想をぶんぶん振りかざすのは危険すぎる。
しかし、やるべきことは、その「鈍重な王道」と、システムに内在したミクロ戦略の両極のどちらかしかないのだろうか?
この国が「貧しい国」だとするならば、そして「貧しい国」だという事実認識を、すっかり忘れ去っていたり、みなかったことにしたがっている国ならば、その両極の合間に、もっともやらなければならない領域が広がっているような気がする。
かいつまんで言うと、「貧しくとも生きられる空間」を社会に確保すること、再構築することであると思う。
月収10万円程度でもまともに暮らせる社会インフラをどう再構築するか。「プレカリアート」層が社会関係資本をすべて断ち切られて、本当の社会的排除に陥ることを何とか避けるような居場所をどう作れるか。
別にそれに対する明確な答えがあるわけではないが、いくつかの補助線になりそうなことはある。
ちょっとあまりに長くなりそうなので、また明日。











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