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February 18, 2006

イカが好き。

といっても、何のひねりもないです。
文字通り、このところ、イカに凝ってます。

イカっていうと、スーパーの刺身盛り合わせや、コンビニの寿司詰め合わせの中の、「白い彩り」「お手ごろな水増し」てな風に思っている人も多いでしょう。それかせめて、おつまみの干した裂きイカ。

僕の中でも近年までそんな扱い。つか、マグロやウナギに一家言ある人は時々いるが、イカに愛がある人には、ついぞ会ったことがない。
しかし、3年前東京湾でコウイカ類が大発生した年に、初めて釣り上げたシリヤケイカを食べてから、認識が変わった。キス釣りに向かった木更津の渡船屋で、「今はイカでしょー」なんて言われて、「まあ仕掛けを売りつけたいだけだろうけど、だまされたと思って買っとくか」と初めて投げたエギに、シリヤケイカがヒット。新鮮で肉厚なこいつが、めちゃくちゃ美味かったわけです。

そもそものところから風呂敷を広げると、日本の一家計あたりの購入量ナンバーワンの魚種は、イカ。マグロやサケ類に猛追されて、80年代以降漸減傾向にあるとはいえ、70年代まではダントツな消費量だった。

でも、そんな実感、普通ないですよね?
イカを調理するのなんて年に数回あるかないか、なんていうご家庭も多いはず。

このPDFファイルを見つけて、謎が少しは解けた。全魚種中のイカの購入割合を引っ張るのは、北海道、東北、北陸、近畿。関東では、マグロ・サケの方が消費が多い。つまり、調理に手のかからない魚を関東人は好むわけ。

しかし、そんな関東でさえ、全魚介類購入量の9.2%はイカ。
ええ、も少しきちんと自覚を持って、その数字に見合った愛を捧げてあげる必要があるでしょうよ、これは(笑)

考えてみれば、「マグロ」とか「アジ」とかいうカテゴリーと、「イカ」が同等なのもちょっとおかしい。

生物学的に無粋に言えば、「イカ・タコ」のくくりで亜綱。「頭足綱」から、アンモナイトだのオウムガイだのの絶滅種た生きた化石を除いたのが、このくくり。その中が二つにわかれ、「十腕形上目」というくくりがいわゆるイカで、「八腕形上目」がタコ。字面だけでもわかりますね(笑)
この「綱」「亜綱」というくくりは、哺乳類(正確には「哺乳綱」)で言えば、カモノハシを除いたすべての哺乳動物がひとつの「獣亜綱」。魚で言えば、エイ・サメを除いたすべての魚が「硬骨魚綱」にあたる。「上目」というくくりで言えば、いわゆる魚のほとんどは「真骨上目」に含まれるし、DNA研究の進展した最新の哺乳類分類では、「偶蹄目」(ウシ、イノシシ~クジラ)「奇蹄目」(ウマ~サイ)「食肉目」(ネコ、イヌ~アシカ)「食虫目」(モグラ)までもが一つの「上目」にくくられるらしい。

つまりまあ平たく言うと、「イカ」という相当大きなくくりを一緒くたにするのはどうなのよ、と。

だって、どんなに料理が適当な人でも、ヒラメとマグロとウナギを使い分けない人はいない。ましてや、どんな味音痴でも、豚肉と牛肉と羊肉と犬肉(?)と、食べ分けられない人はいない。
イカに全然愛を注がないあたしらは、せいぜい小さいイカが出てきたら「ホタルイカ?」なんて言うぐらいのところで、ヤリイカとスルメイカとコウイカを食べ分けることも使い分けることもできない。けどそれって、生物学的に喩えれば、そんな相当マヌケな話なわけだ。

てなことを考えて、ここ1年ばかり、家族で回転寿司に行くと、必ずイカは3種類以上注文して食べ比べてきたし、どっか地方に行くと、必ず土地の旬のイカを頼むようにしてきた。百均のスシローあたりでも、注意してみると、ヤリイカ、コウイカ、アオリイカと3種類ぐらいあるもんなんだよね。まあ、アオリイカはタイ産だろうけど。

で、そういう食べ比べをしてると、今までのイカに対する姿勢を恥じ入るぐらい、それぞれ全然違う。別にそれは難しいことでも何でもなくて、誰でもすぐに食べ比べられるようになります。生物学的な分類の多様性から考えても、そのぐらいでむしろ当然なんでしょう。

自らの「イカ道」に自信を持ったのは、先日山口に行ったとき。
山口は豊北町、今では安倍慎三先生のお膝元の港町と合併して「下関市豊北町」なんて気が抜けた住所になっちゃった過疎地に父の実家があって、先週祖母の葬式に行ったんだけど、ていうか、こんなくだらないネタでそんな重い話を持ち出してきたことにはスルーの方向で。で、近所の結構素敵なホテルに家族で一泊して、妻とホテルの寿司屋に行って、当然ながらイカを頼むわけです。

「いまはヤリイカですか?」(←関東で「冬イカ」といえばヤリイカが常識。つか、12月に博多に行った時も素晴らしい活けのヤリイカがあったから、多分この辺の海域でもそうだろうとは思ってた)

「いえ、ヤリイカは夏ですよ。今はミズイカぐらいしかありません」
「「ミズイカ」ですか? (方言だなぁ、何だろう) じゃ、それお願いします。」

あ、この甘さ全開のネットリ感。一発でわかります。「タイ産でない」アオリイカ。季節も悪くないね。

「ああ、素晴らしいアオリですねぇ」

「あーん、ていうか、よそではコウイカっていうんじゃないですかね」
「え、そうなの?」

と、この会話の肝を説明しとく必要があると思う。
「十腕形上目」は、大きくツツイカ目とコウイカ目に分けられる。ざっくり言うと、スルメとかヤリとか、そういう細長いイカがツツイカ目で、丸っこくて体の中に甲羅が入ってるのがコウイカ目。
で、アオリイカは体が丸っこいし、釣り的に言えば、コウイカ系統と同じ仕掛け(エギ)で釣れるから、コウイカの仲間と勘違いしがちだけど、これが違って、ツツイカ目に入るんだ。

でも絶対にあれはコウイカの食感ではない、と確信していた僕が、家に帰ってまずやった仕事が「ミズイカ」の標準和名の検索。こういうときに頼りになるボウズコンニャク先生の「市場魚貝類図鑑」を開くと、すかさずアオリイカとのご回答。

って、やっぱ、そうじゃんか(>_<)
自分の舌もまんざらではないぞ、というか、意識さえしてれば、このぐらい食べ分けられるのがある意味当然というぐらい、味が違う。
と同時に、寿司屋にしてイカに対するこの愛情のなさに泣けてくる。まあ、ヒラマサの刺身にも、鱗一個分皮を残しちゃうような、片田舎の寿司屋ではあるのだけれど。


そんなわけで、何を書きたい文章かよくわかんなくなってきちゃったけど、少しは役に立つ情報をということで、そこらで見かけるイカ数種類に関して、個人的な好みや使い分けを書いときましょう。

まずはコウイカ。
なんといっても僕の中では、全てにおいてイカの王様です。プチっという食感と、甘味と水分のバランスが最高な肉厚の身は、寿司にもベストと思う。寿司屋ではとりあえずこれを頼んどいて、絶対に後悔はない。柑橘ヒトタラシにも合う。そんな贅沢したことないけど、新鮮なコウイカを細かく切って掻き揚げっていうのは素晴らしいそうだ。
関東ではスミイカで通るこいつは、墨の量も半端なく、質もいい。だから、ゲソとエンペラは墨に絡めてパスタかリゾットと捨てるところがない。

コウイカに準ずるコウイカ目のお仲間は、国産ではカミナリイカやシリヤケイカだけど、この辺は釣ってでも来ない限り、関東ではあんまり流通しない。
その代わりに安値で流通してるのが、タイ産やアフリカ産の通称モンゴウイカ。(もともと市場で「モンゴウイカ」と呼ばれていたのは、関西中心に流通するカミナリイカなのだけど) 悪くないのは、タイ産の小ぶりの冷凍モンゴウイカ。土地のものはその土地の味で・・・というわけでもないけれども、ナンプラーを一振りして、高菜やニンニクの芽とさっと炒め合わせたりするには、ベストマッチです。

見かけが一番キレイなのは、冬の女王・ヤリイカ。非常に深いところにいる、体の透き通ったイカです。
これはとにかく鮮度が命。活けのヤリイカ刺の、繊細な甘さと歯ざわりは、非常に品がいい。
しかし、身が薄く、旨みも線が細いので、煮イカやブイヤベースには全然向かない。ゲソなんかはむしろ、油を加えて、からっと天麩羅にするか、もっと言うとフリッターなんかにしてあげると、一番いい。

流通量が圧倒的に多く、価格も安価なのはスルメイカ。
オールマイティに使えるけど、刺身にしちゃうと、なんともタフで品のない食感になっちゃう。醤油とわさびをぶっ掛けたイカソーメンをご飯に乗せてかっ込む、みたいのにはベストだけど。
生のスルメが手に入ったら、やっぱりいいのは煮イカ。そして塩辛。身の硬さと強い旨みは、時間をおいて強い味をしみこませてこそ生きてきます。

値段の面では帝王級なのがアオリイカ。
でも、個人的には、ネットリしすぎだし、甘すぎだしで、実はあんまり好きじゃない。鮮度がよくても、状況は別に変わらない。地引網に入った直後のアオリイカを捌いて食べたこともあるけど、ネットリ甘いのに、身が引き締まった硬さが加わって、正直そんなに箸が進む感じじゃない。
お寿司屋さんでアオリイカに高い金を払うなら、断然スミイカの食感を選びます。
ましてや、タイ産のアオリイカはちょっと食べられたもんじゃない。
加工したらどうなんだろうなぁ。うーん、案外天麩羅なんかは美味しいような気もするが、それにはお値段がよすぎるだろう。

そしてホタルイカは、四の五の言わずに沖漬けにしとけ、と。


はいはい、イカへの愛を、啓蒙、啓蒙。

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Comments

yas-igarashiさんらしさ爆発のエントリー、楽しく読ませて頂きました。

上海で普通に見かけるイカといえば、日本料理屋で出るちょっとした刺身と、スーパーで見かけるコウイカぐらいです。でも、スーパーで見かけるコウイカって、日本ではとても店頭に出せないような悲しいレベルの鮮度です。とても食指が動く代物ではありません。

上海の海鮮は、質・量ともにまだ日本に遠く及びません。ぼくは日本に帰るたび、うまい魚を食いまくっています。

明日からまた日本ですが、今回はイカが食いたくなりました。

Posted by: 上海のM | February 20, 2006 at 10:38 AM

えらくイカに夢中だな(笑)。
北海道に行った時にイカって美味いんだなって感激した。
でも、普通にスーパーとかで買っても美味いイカに巡り会うことができないのだが・・・。
あと北海道でイカゴロのルイベというのがあって、イカの肝を軽くシャーベット状にした食い物が、かなり気に入った(こっちでは、あまり食えない)。
とりあえず、イカの分類を勉強できたよ。今後、気を付けて味の区別が付くようにしてみる(笑)。

Posted by: taro | February 20, 2006 at 08:58 PM

イカの件にコメントがつくとは思わなかったDEATH。

>でも、スーパーで見かけるコウイカって、日本ではとても店頭に出せないような悲しいレベルの鮮度です。

日本でもスーパーに新鮮なコウイカなんてめったに売ってないって。アフリカ産の解凍モンゴウイカならあるだろうけど。
でも、何であれ生物が手に入るなら、刺身さえあきらめればいいわけで、炒め物が良いでしょうよ。青菜といため合わせて、贅沢に古越龍山なんかを一振りしてフランベすれば最高でしょうよ。

>あと北海道でイカゴロのルイベというのがあって

ああ、これはおいしいですね。
最近東京の居酒屋でも「北海系」を売りにしているとこでは、時々おいてます。
「真イカ(すなわちスルメイカ)の沖漬け」なんつって、この前も体全体をルイベにして輪切りで出してたなぁ、ワタミ系列の「北海市場」かなんかで。
でも、沖漬けはやっぱりホタルイカのほうがおいしいと思う今日この頃なのだ。

Posted by: yas-igarashi | February 21, 2006 at 06:24 PM

上で書き忘れたけど、コウイカは日にちが経っていたほうが組織が緩んで柔らかく、炒め物にはむしろ向いていると思います。日本人はとかく刺身=鮮度至上主義だけど、それさえ諦めれば。

Posted by: yas-igarashi | February 21, 2006 at 06:26 PM

>何であれ生物が手に入るなら、刺身さえあきらめればいいわけで、炒め物が良いでしょうよ。青菜といため合わせて、贅沢に古越龍山なんかを一振りしてフランベすれば最高でしょうよ。

おお、これは目から鱗!
まだまだ僕は頭が固いようです。
ちなみに古越龍山は、決して贅沢ではありません。スタンダードともいうべき5年モノでも、1本10数元(200円ちょっと)で売っています。もちろんこれを暖めて飲むと最高に美味しいわけではありますが。

Posted by: 上海のM | February 21, 2006 at 07:14 PM

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