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September 06, 2005

自分の生活が、まだしも悪くならなそうなヒトをちゃんと選ぼう I

最近はそれほど忙しくない。
でも、ブログで今回の政治のことは語るまいと思っていた。なぜって、経済政策が焦点の今回の選挙の中で、もともと僕はリフレ派で、構造改革にはあまりポジティブではないけれど、それを文章で主張するだけの確信が未だ持ててなかったから。
だから、この機会に、あまり人様に何かを主張するというイタイことをせず、経済政策を一から勉強しなおそうと思っていた。

しかし、本来はチラシの裏に書くべきことなのかもしれないけど、それでもやはり、ネットの片隅にでもひっそりと書いておかないとあとで後悔するような気がし始めたので、何度かにわたって選挙に向けた自分の考えを書くことにする。

そう考えを変えた由縁は、非常に嫌なものを、いまの政権が目指しているであろう目的地に見てしまったからだ。

僕が以前のホームページを作りはじめたのは、小泉政権の軌跡とほぼ重なっている。
その頃から感じていた「社会が壊れる」という感覚を、このブログを始めた1年前ごろから、徐々に深刻なものとして自覚化できるようになってきた。

自己責任異論 I
「社会が壊れる」について
NHK「日本のこれから・格差社会」について

そして、泥濘のニューオーリンズには、はっきりと「壊れた社会」が像を結んでいた。

車がなくて避難できなかったらほっとかれるような社会に、住みたくない。
月初に届く福祉給付を使い切ってしまったら、月末のハリケーンから逃げ出す資金もなくなるような社会に、住みたくない。
スリランカやニコバルでも起こらなかったような、救援物資をめぐる銃撃戦が起こるような社会に、住みたくない。
略奪することと、略奪から守るためにセキュリティを厳格にすることが合理的な選択となってしまったような社会に、住みたくない。

20年後に関東直下型地震なり東海・東南海連動地震なりが起こったとき、そんな事態に巻き込まれて、「30年前の神戸のときはまだしもいい時代だったなぁ」などとシャレにならない後悔をしたくないのである。


ここのところ経済政策を勉強させてもらっている、ネット上のリフレ派総本山(?)のサイトである、bewaad institute@kasumigasekiに、以前こんなエントリがあった。

ここに取り上げられている障害者自立支援法案っていうのは、要は障碍者という集団の「既得権」を奪う配分ルールのネオリベラル的な変更に他ならないわけだけれど、このエントリーから触発されたことをまとめると、こういうことだ。

小泉政権は、閉塞感を抱える大衆の漠然とした期待感に呼びかけ、改革支持の熱狂の中でまず総論を固めてしまう。
「この国は変わらなければいけない」、と。
4年前そうやって総理になった彼は、その後も天才的な嗅覚で、少しずつ支持率が下がるたびに政治的なイベントを仕掛け、大衆の熱狂を断続的に爆発させてきた。もちろん、今回の解散もその一つである。

(余談だが、実は僕にも、1週間だけ小泉政権発足を慶賀したイタイ記憶がある。2001年の4月、僕はパキスタンのカラチにいて、ウルドゥ語紙の記事を友人に訳してもらって小泉政権誕生を知った。日本を出発する時には橋本再登板で決まりだというムードだった情勢でのこのニュースはやはり、僕のようなヒネクレ者でさえも小躍りさせるような新鮮なインパクトがあった。もっとも、1週間後帰国して閣僚名簿に竹中平蔵の名を見つけ、この政権の本質を直感してすっかり落胆したが)

そして、総論としての大衆的な改革支持を取り付けた上で、特殊法人、道路に代表される公共事業、郵政、社会保障などの各論において抵抗勢力を分断撃破する。
各個の既得権益者は、それぞれそれほど数が多いわけではないから、大多数の利益をむさぼる少数の「抵抗勢力」として簡単にレッテル張りし、それを攻撃して溜飲を下げることができる。特殊法人も、道路公団も、建設事業者も、特定郵便局も、そして障碍者も。

もちろん、そのレッテル張りが「間違ってない」場合も多いかもしれない。「合理的」に判断して、なぜ「痛み」を甘受してもらわなければならないのか、とくとくと説明しなければならない局面も多々生まれるだろう。

しかし問題なのは、「老人」としてであれ、「子ども」としてであれ、「主婦」としてであれ、「労働組合員」としてであれ、「所得税を払わなくて済んでいる低所得者」でとしてであれ、多くの国民は、みなそれぞれが、何らかの形で既得権者であり、その意味では常に、多数に寄生する少数派だということだ。
そこに、改革に賛成するという総論=イデオロギーのもとに、次々に既得権者=少数派が「抵抗勢力」と見なされて各個撃破される。それぞれへの切り捨て作戦のもとでは、各「抵抗勢力」が周囲から孤立させられ、その際には、次の作戦で槍玉に挙げられる別の「抵抗勢力」は、得てして改革を支持する「大衆」の側にいる。

もちろん、それで改革が進めばいいだろう、という考え方もある。自分も、戦術的にはそういう局面があることを否定しない。
しかし、さらに問題なのは、この構図が導く「社会の崩壊」の可能性である。

この構図での「分断統治」と「各個撃破」は、社会の各集団が互いをパイを奪う対象として敵視しあう状態を帰結しかねないからである。
いまは国のレベルの議論しか表面上は見えないが、国政のレベルで行われるパイの奪い合いと、「抵抗勢力」というレッテルの張り合いは、常にローカルなところに基盤をおいている。その殺伐とした感覚が、地域社会を覆い尽くしていったら・・・?

上記エントリによれば、構造改革を支持する財界ではいまや、新しい公共という考え方が出てきているという。
要は、社会保障を縮小せざるを得ないこれからの時代に必要なのは、地域に張り巡らされたソーシャル・キャピタル(社会関係資本)、つまりは人と人との結びつきや信頼感の網の目である、ということである。
(もちろん、逆に言うと、「金は出さない(出せない)」「官に頼るな」の言い訳に、ソーシャル・キャピタルだの、人間力だのっていうスローガンを持ち出して推奨しているわけだが)

それは、まったくもって正しい。
しかし、相手の痛みに共感した真摯な説得も、ギリギリの原則をぶつけ合う激しい議論も尽くすことなしに、順々に「抵抗勢力」とレッテル貼りして大衆の感情を動員するだけで、既得権者を屠ってゆく政治のあり方は、残念ながらソーシャル・キャピタルの蓄積とは正反対に向かいはしないか。

「自助努力」のないシングルマザーを、低所得者を、そして黒人を、槍玉に挙げてきたアメリカ社会が、既に壊れていたということを、他人事と思うべきではない。

つづくっ!

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Comments

どうも、コメントが前後しちゃいましてすみません。

>余談だが、実は僕にも、1週間だけ小泉政権発足を慶賀したイタイ記憶がある。

うーん、同じですね。私も恥ずかしながら小泉氏就任直後は小躍りしたくちです(笑)。当時の不人気自民党からすれば画期的な変化だと映ったのです。

その後転換点となったのはすぐ後だったと思うのですが、日経に載った小野善康氏の経済教室のコラムでした。あれを読んだ瞬間、この政権の本質を私も直感しました。今はリフレ派なので小野さんとは少しスタンスが違いますけど、景気重視という共通点はありますね。

それにしても管理人さんの洞察は鋭いものがありますね。日本の世論の現状を目の当たりにすると、私もほとんど絶望的になります。

(Ⅲのエントリのコメント、管理人さんをトピ主って書いちゃいました。ヤフーの癖が出て・・・。)

Posted by: すなふきん | September 10, 2005 at 08:16 PM

はじめまして、精神保健福祉法32条制度の改悪に反対するグループ「32project」と申します(精神疾患患者を中心に、その支援者・友人とで結成されたネット上のグループです)。

「障害者自立支援法案」に触れていらっしゃったので、少々情報提供を。
うつ病など「心の病」を抱えた者にとってのほとんど唯一の福祉=「32条制度」が、政府の「障害者自立支援法案」で切り捨てられようとしています。この法案は7月に衆議院で可決されましたが、郵政解散のため廃案となりました。しかし政府は選挙後の国会で、この法案をあくまで成立させる構えです。

今回の選挙を1つのきっかけに、もっと多くの人に「心の病」や32条制度改悪問題のことを知ってもらえるようにと、グループのブログ http://sea.ap.teacup.com/32project/ をやっております。
32条問題関連情報のほか、各政党の障害者福祉政策比較サイト(障害者団体による各党へのアンケート結果)なども紹介しています。よろしければ、ぜひ1度ご覧ください。

Posted by: 32project | September 11, 2005 at 12:44 AM

>32projectさん

はじめまして。書き込みありがとうございます。

障害者自立支援法案のことはずっと気にはなっていましたが、各条文の内容とそれに関する個別の議論まではとんと不勉強だったので、精神疾患患者の方々の抱えていらっしゃる状況について、とても勉強になりました。ありがとうございました。

当然ながら、障害者関係の各団体が、この問題については激しい反対をしていますが、障害種別によっては、この問題に結構温度差があるような方もいらっしゃる、と聞いています。
「障害」というひとくくりのアイデンティティの問題性はずっと指摘されてきたわけですが、その一方で、上記の事態もまた、ある種の「個別撃破」なのかもしれません。個別の事情に配慮した丁寧な議論の必要な局面と、原則の旗のもとに大同団結すべき局面と、理念的にも戦術的にもなかなか難しいところがあるのではないかと、漠然と考えておりました。

貴サイトのアンケートによると、与党候補者の側にも、抜本修正が必要と言う意見は強いようですね。(まあ、回答率が低いことに何がしかの「意味」を読み取るべきなのかもしれませんが・・)

この法案は理念的には、「マイノリティ・ルール」を許さずに、「マジョリティ・ルール」の中に投げ込む、という話で、それが「マジョリティ」の側には一見それほどの問題もなく受け取られてしまいがちなことも含めて、新自由主義(ネオリベラル)的改革の一つの典型事例なわけですよね。
そのような論点を、今度の選挙の結果がどうあれ開かれる次の国会では、国民にも伝わってくるように議論して欲しいと願っています。単なる予算枠の数字の議論だけに止まらずに。(そもそも、年金や道路の問題と違って予算規模としてはそれほど大きくないわけですし)

これからも、色々と勉強させてください。

Posted by: yas-igarashi | September 11, 2005 at 07:03 PM

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