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March 13, 2005

「社会的な責任」について III

ずいぶん間があき、すみません。

会社の価値=株主価値じゃあワレェ、というかなり明確かつそりゃそうだろよ、な司法判断が出たこともあり、まあこれをまとめておこうかと。

あ、書き始める前に、前のエントリから「庶民」という曖昧な言葉を多用してるけど、これ間違っても「市民」の打ち間違いじゃないからね(笑)
明らかに階層的なニュアンスを含んだ概念。
非常に簡単に申し上げれば、森永卓郎さんいうところの、来るべき時代に膨大に形成される「年収300万円以下」の層です。で、このシリーズの最後(予定)の今日のエントリは、そのU300万層こそが、株式市場の主要なプレーヤーのひとつになっていかなければいけないんじゃん、自分たち自身のためにこそ、ていうお話。


ところで私自身は、株式投資既にハジメテマス。

2月上旬にシンガポールからのエントリで復活するまで、3ヶ月間もずーっとこのブログをほっておいてたのは、まあ単に僕の怠惰のなせる業なんだけど、もうひとつちょっとした理由がございました。
11月中頃から、少しずつ溜まってきた銀行預金の多くを証券会社にうつし、株の売買をはじめました。当初は本当にイロハもわからなかったから、基本中の基本を勉強するだけで数日間も徹夜をし、頭の中は資産運用(と聞いて呆れるような額ではあるが)で一杯でした。その当時ブログを書くと、必然的にネット上にあまたある株式日記みたいなのにならざるを得ず、それはめっさイヤだったので、しばらく更新をやめていたのです。

そんなわけで、これからのエントリでも、どの個別銘柄を選んでいるとか、どのぐらい損益が出たかとか原則的に書きたくはないのだけど、まあ、株っていろんなことを考えさせてくれるいい機会ですわ。
中でも一番学んだのが、同一業種の中の(消費者にとっては)似たような企業でも経営方針って結構いろいろなんだなぁ、ということ。

僕の基本的な意識として、「ビジネスモデルのわからない会社には投資したくない」というのがあったので、銘柄を決めていくときに、とりあえず身近に利用頻度の高い会社をまず挙げてみて、その中から割安感があってかつ財務条件の健全なところを絞っていって、というように選んでいった。
そうすると必然的に、外食産業とかそういうところの株が数多く候補にあげられることになる。株主優待という意味でもおいしいしね。

その中で、11月下旬当時、テクニカル的に妙味のあった銘柄の一つに、Wがありました。
言わずと知れた「居食屋・○○」の運営会社ですね。

そこの会社のYahoo!Finance掲示板を見ると、ちょっと気になる投稿が連続してあったのです。
まとめると、「この会社のバイトへのオペレーションは酷い、サービス残業も常態化・システム化されている、こんな会社の株を買うというのはどうなんですか?」というようなものです

この業界でのこのテの話というと、Wが訴訟沙汰を起こしたモンテローザ・グループが有名ですね。昔もとりあげたことがあるけれどこれです。

Wグループにそういうことがあるのかは、謎です。極端に言えば、株主相手の匿名掲示板へのこんな書き込みなんて、ライバルグループの社員が、企業イメージを落とそうとして書き込んでいるのかもしれない。

しかし、その真偽の程はともかくとして、呆れたのは、その一連の投稿への「一般投資家」の反応でした。
そのほとんどが、「その話を聞いて安心しました。いい会社ですね、これからも投資しつづけます。あなたたちをそれだけ悪条件で雇用しているのなら、人件費が圧縮できているわけで、今後も収益率アップが見込めますからね」というようなものだった(w

その「民度の低さ」(笑)に呆れると同時に、こういう投資に対するマインドが変わっていけば、あるいは、違うマインドを持ったプレーヤーが株式市場に参入していけば、こうした労働条件改善へのかなり重要な梃子となりうるのではないか、という可能性を感じました。

つまりは、いわゆる「社会的責任投資(SRI)」と呼ばれるものを、少し雇用や労働条件といった方向にシフトしていけばいいということ。

まだまだ日本では、社会的責任という観点からの企業情報不足が顕著であまり一般的にはなっていませんが、アメリカでは2兆ドル規模に達しており、日本でも関心が急速に高まりつつある分野です。
その中で日本では、情報が少ないながらも「エコファンド」のような名前が先行するなど、企業の社会的責任として環境面が突出する傾向にあるけれど、庶民としては、もっと切羽詰った利害関係を重視してもいいのではないか、と。

もちろん環境も大事だ、フェアトレードしている企業は支援したくもなる、しかし自分たち(正確に言うと、自分たちが属している階層)の生活は当面もっとも大事ではないですか?
少なくとも、モンテローザだの、取り引き先泣かせで排除勧告までされたドンキホーテ(ここは従業員の労働条件も相当劣悪らしいが)だのの株には、どんなに旨みがありそうでも投資しない、というぐらいの消極的な選択はしてもいいんではないでしょうか。

同じ社会的責任といっても、その力点の置き方は国により少し異なるそうです。
英米では伝統的に、どちらかというと「倫理」(アルコールやタバコ産業に投資しないとか)に力点が置かれてきたのに対して、欧州大陸で言われる社会的責任とは、何といっても環境と雇用、とのこと。

翻ってこの日本の状況を見るに、欧州に比べて労働組合は完全に壊滅&自滅状態。
だとすると、不当な労働条件を続ける企業を、企業価値=株価下落というリスクにさらし、結果として労働者の権利を守るという回路の必要性は、欧州よりもさらに高いのではないでしょうか?

考えてみれば、企業と個人のかかわり方というのには、いくつかあるわけです。
まずは消費者として。それから従業員として。そして株主として、です。

近年消費者運動が高まり、クレイマーのような存在も建設的なものであればポジティブに認知されつつある中、消費者としての権利はずいぶん声高に主張できるようになってきた。この傾向は強まりこそすれ、弱まることはないでしょう。

その一方で、かなり内向きかつパターナリスティック(=温情的であると同時に抑圧的)な形で従業員の顔を見てきたカイシャ主義は、さすがに維持できなくなりつつある。といって、ほとんどの雇用者にのしかかる労働条件の下方圧力を撥ね退けるのに、労働運動という王道は通用しそうな状況にない。

だとすれば、急速に絶対視されるようになってきた「株主」という立場でも、企業にかかわるようにしていけばいいのです。そして、「株主」という立場から、労働条件の下方圧力に介入していけばいい。
もうひとつ、「消費者」という立場からそれに抗していく、という戦術も当然アリだけど(お得意の「フバイ運動」とか w)、回路は一つより二つあったほうがいいからね。それに、「株主」という立場からの方が、はるかに直接的だ。

「何を甘いことを」という人がいることも承知。そんな投資し姿勢じゃ損するよ、という声が飛んできそう。
まあ確かに、それほどの高利回りにはならないだろうね。

しかし、近年、やはり雇用や環境が主要テーマになりつつあるアメリカの社会的責任投資ファンドは、かなり好調に推移しているようです
上でリンクしたサイトの表現を引用すると、「企業の抱える問題はその企業のリスクであり、それを明らかにして、問題を避けることができ」るわけで、「社会的責任投資ファンドは、企業を変革する力を持つことで、投資家にとっても投資リスクを軽減するもの」です。

まあ、そういうファンドが未成熟な日本では、そうした視点を入れていこうとすると、とりあえずよりリスクの高い個別株取引になってしまうわけですが、まあそれでもいろんなヘッジを効かせることはできるわけで。

考えてみれば、株式投資って、100万円あれば、かなりいろんなバリエーションかましながら出来るんですよ。
とりあえず夫婦のどちらかが年収300万円程度はとれている世帯なら、子供にお金がかかっていたとしても、たいてい100万ちょっとぐらいの預金は持っているでしょう?(独身ならさらにハードルは低いはず)
最小で20~30万円あれば、なんとか最低限の株式投資はできる。これなら、時給750円以下のパートタイマー(=堀江氏の前妻・・・)には難しいけど、時給950円の深夜アルバイトであればクリアできる、という程度のハードルです。

そういうお金を、みんなが怖がらずに株式投資に回してみれば、結局は労働者としての自分たちの権利を守ることにも繋がりうるのでは、と。
たった100万円、って吹く人もいるだろうけど、3000万人が100万ずつ預金を株式市場に回したら、それで30兆。東証の時価総額は380兆。この数字をどう考えますか? 
しかも、多くのフリーターやパートの雇用に関わるような企業って、それほど時価総額の高い企業じゃないですよ。特に外食産業なんかは。
(まあ、この戦略の本当の難点は、本格的に労働条件の悪い企業の多くが、「どれだけ寄ってたかっても影響力を及ぼせないほど時価総額の高い大会社」だということじゃなくて、「そもそも株式公開していないから逆立ちしても株が買えない中小零細な企業」だったりするところなのだが・・・)

ちょっとネットで探してみれば、結構ありますよ。
へぇ、このご時世にこんなに従業員のキャリア形成を考えてくれてるんだ、と感心させられる企業も。

その中で、割安なものを探して中長期的に保有し、配当をもらいつつ企業の成長を応援し、あるところでキャピタルゲインというおまけをもらい、次の応援する企業を探す。

ある意味、実はこれこそが株式投資の王道でもありますよね。

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