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April 08, 2004

4・2 いい加減やめてくれませんか

昼間に、上野の大先輩に聞き取りを済ませたあと、さあ、そのメモを満喫で打ち込んどくかね、と思いつつ、結局マンガを読んでしまうダメ界隈。

矢沢あい『パラダイス・キス』読みふけってしまいました。
娯楽作品としては、文句なし。はまります。

基本的なストーリーをかいつまんでおくと、親の言いなりに主体性なく「受験」を目指すけれども、進学校では落ちこぼれなヒロインが、ふとしたことから、「主体的」に自分の目指すものを追い求めているファッション専門学校のブランド・ユニット「パラダイス・キス」に出会うことで、「自立」を成し遂げていくというお話。で、そのあとは、恋愛関係、人生関係、いろいろと。

このマンガは、このように「主体性」をめぐる内在的な困難から読み解くのが王道かもしれないけど、どうしても別のところが気になってしまう。
「主体性のない受験勉強」がダサくて、「主体性のあるデザイナー修行」がイケてる、というあまりにも平板な前提が。「主体性のある受験勉強」や「主体性のないファッション専門学校生」も出てこないでもないのだが、話の本筋にはなりえない。

その上、この物語は、絶望的なまでに「リアリティ」に富んでいる。「主体的」に自分の未来に向かって歩んでいる「パラダイス・キス」のメンバー4人は、財閥のご落胤だったり(母はモデル)、姉が著名なデザイナーだったりと、みなそれぞれにとんでもない「文化資本」を有したガキども。
単身赴任中の存在感のない父と、ヒステリックで虚栄心ばかり強い母を持つヒロイン・紫は、確かに彼らと比べれば「何もない」が、持って生まれた類稀な美貌で、何とかかんとか、イケてる世界のトバ口に立つことが許される。

しかし、その辺の絶望的な「リアリティ」は、矢沢あい読者にはおそらく見過ごされるだろう。
ほとんどの読者は、「紫のようにキレイじゃない」から、自分がそううまくはいかないことは理解するだろうけれども、だがしかし、そんな自分にも選べる「地に足のついた」未来を「主体的に」選ぼうとして、受験勉強という最高にダサい歩留まり戦略を徹底的に軽蔑し、「自分探し」を開始する者も出てくることだろう。
まあ、何のかんの言っても、歩留まり戦略の中で騙し騙し生きていくことに「流される」人間が確かに大多数ではあるだろうけれども、『パラダイス・キス』のような物語が相も変らず繰り返される状況では、その「チョボチョボ」な人生を肯定的に捉えることはますます難しくもなる。

「未来を選べ」という命令ほど暴力的なものはない、ということをそろそろ学ぶべく、あれほど大ヒットした『トレインスポッティング』を見直してみてもいいはずだ。

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